電話営業(テレアポ)と特定商取引法:会社あての電話で気をつけること

法律とマナー 公開 文:リストハブ編集部

会社あてのテレアポに特定商取引法の電話勧誘販売の規制はかかるのか。事業者どうしの取引の適用除外(26条1項1号)と、個人事業主や小さな店では適用されうるという消費者庁の通達、適用される場合の名乗り・再勧誘禁止・書面・クーリングオフを条文をもとに整理しました。

営業リストを使って会社に電話をかけ、自社のサービスを案内する。テレアポ(電話でアポイントを取る営業)はBtoBでよく使われる方法です。このとき関係してくるのが特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号、以下「特商法」)の「電話勧誘販売」の規制です。

「会社あての電話なら特商法は関係ない」という説明をよく見かけます。半分は正しく、半分は注意が要ります。事業者どうしの取引は原則として適用除外ですが、消費者庁の通達は「相手が法人だから一律に除外、ではない」としています。リストに個人事業主や小さな店が混ざっていれば、その相手には規制がかかる可能性があります。

この記事では、条文と消費者庁の通達で確かめられたことだけを書きます。適用される場合のルール、適用されない場合でも守っておきたい実務を、法律の義務と編集部のすすめに分けて説明します。

電話勧誘販売とは:電話で勧誘し、郵便などで契約する取引

特商法第2条第3項は、電話勧誘販売を次のような取引として定めています。

  • 事業者が電話をかけて、契約の締結について勧誘する
  • 相手は、郵便などの方法で申込みをしたり、契約を結んだりする

事業者が自分から電話をかける場合だけでなく、政令で定める方法で相手に電話をかけさせて勧誘する場合も含まれます。

テレアポにあてはめると、電話で商品やサービスを勧め、その後に申込書の郵送やネットでの申込みで契約に至る流れが、この定義に近くなります。自社の営業がこの形に近いかどうかを、まず確かめてください。

会社あての電話は原則として適用除外になる(26条1項1号)

特商法第26条第1項第1号は、相手が営業のために、または営業として結ぶ契約について、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定を適用しないと定めています。

会社が仕事で使うサービスを、会社として契約する。こうした事業者どうしの取引には、電話勧誘販売の規制は原則としてかかりません。BtoBのテレアポの多くは、この除外に入ると考えられます。

ここで気をつけたいのは、除外の基準が「相手が法人かどうか」ではなく、契約の目的で決まることです。

相手が法人でも一律ではない:消費者庁の通達

消費者庁の通達「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日)は、第26条第1項第1号の解釈を次のように説明しています(p.54)。

通達の説明 読み取れること
相手が事業者・法人であっても、一律に適用除外になるわけではない 名義だけで判断しない
事業者名義の契約でも、主として個人用・家庭用に使うものなら原則として適用される 使い道で判断される
実質的に廃業している事業者や、事業の実態がほとんどない零細事業者は、適用される可能性が高い 規模と実態も見られる

つまり、電話の相手が屋号を持っていても、契約の中身が家庭で使う商品に近ければ、電話勧誘販売の規制がかかる可能性があります。

個人事業主やごく小さな店に電話するときの注意

営業リストには、法人だけでなく個人事業主や家族経営の店も入っています。通達の説明をふまえると、次のような相手は、適用除外にならない場合があります。

  1. 店舗と住まいが同じ建物にある個人の店
  2. 一人で営む個人事業主
  3. 営業しているかどうかがはっきりしない事業者

これらの相手に、仕事にも家庭にも使えるものを勧める場合は、特に判断が分かれやすくなります。架空の例として、自宅兼店舗の小さな店に家庭でも使える機器を案内するケースを考えてみてください。契約の名義が店でも、主に家庭で使うなら規制がかかる可能性があります。

電話をかける前にリストで見ておきたい手がかりは、次のとおりです。

  • 会社名に「株式会社」「合同会社」などの法人の種類が付いているか
  • 住所が住宅地の一軒家や集合住宅の一室になっていないか
  • 自社が案内する商品が、仕事専用のものか、家庭でも使えるものか

これらはあくまで目安です。法人の種類が付いていても、通達のとおり、主に家庭で使う契約なら規制がかかります。反対に、個人事業主でも仕事のために結ぶ契約なら、適用除外になりえます。最後に決め手になるのは、相手がその契約を何のために結ぶかです。

判断に迷う相手には、はじめから「特商法が適用されるもの」として対応します。次の節のルールを守っていれば、適用されるかどうかがあとで問題になっても慌てずに済みます。

適用される場合の主なルール

電話勧誘販売の規制がかかる場合、主に次のルールを守る必要があります。

条文 内容
第16条 勧誘の前に、事業者名、勧誘する人の氏名、商品などの種類、勧誘のための電話であることを告げる
第17条 契約しないという意思を示した相手に、勧誘をしてはいけない
第18条・第19条 申込みを受けたときや契約を結んだときに、書面を渡す
第24条 書面を受け取った日から8日間は、相手が申込みの撤回や契約の解除(クーリングオフ)をできる

最初に名乗る(第16条)

勧誘に入る前に、会社名、自分の名前、何を案内したいのか、勧誘の電話であることを伝えます。用件をぼかして話を続け、途中で営業だと分かるような話し方は、この条文の趣旨に合いません。

断られたら、それ以上勧誘しない(第17条)

「結構です」「契約しません」と言われたら、その電話で勧誘を続けてはいけません。改めて電話をかけて勧誘することも禁じられています。

書面を渡す(第18条・第19条)

申込みを受けたとき、契約を結んだときには、決められた書面を渡します。相手の承諾があれば、書面の代わりに電子メールなどの電磁的方法で渡すこともできます(第18条第2項)。

クーリングオフは8日間(第24条)

書面を受け取った日から8日間は、相手は申込みの撤回や契約の解除ができます。このとき事業者は、損害賠償や違約金を請求できません(第24条第3項)。これより相手に不利な特約は無効です(同条第8項)。

書面の記載事項の細かい内容は、この記事では扱いません。適用される取引を扱うときは、条文と通達の原文で確かめてください。

法律が適用されない場合でも守りたい実務

事業者どうしの取引で特商法が適用されない場合も、次の3つは守ることを編集部はすすめています。ここからは法律の義務ではなく、編集部のすすめです。

1. 最初に名乗る

会社名、名前、用件を最初の一言で伝えます。

お忙しいところ失礼いたします。株式会社〇〇の山田と申します。業務用の〇〇のご案内でお電話しました。1分ほどお時間をいただけますか。

用件が分からない電話は、受付で止められることが多いと編集部は考えています(推測で、数えたデータはありません)。最初に名乗ることは、法律上の義務があるかどうかにかかわらず、話を先に進めるための前提になります。

2. 断られたら記録して、二度とかけない

断られた会社は、リストに「架電しない」の印を付けます。別の担当者が同じ会社にかけてしまうのを防ぐためです。記録しておきたいのは次の項目です。

  • 電話をかけた日時
  • 断られた日と、断った人の部署・名前(分かる範囲で)
  • 「今後の案内は不要」と言われたかどうか

新しくリストを買い足したときも、この「架電しない」リストと突き合わせてから電話をかけます。番号の表記をそろえて突き合わせる手順は、テレアポ用の営業リストの作り方で説明しています。

3. かける時間帯に配慮する

始業直後や昼休み、終業間際は、相手が電話に出にくい時間帯です。業種によって忙しい時間も違います。飲食店なら仕込みや営業の時間を避ける、といった配慮です。これは法律の義務ではなく、編集部のすすめです。

まとめ:迷う相手には、適用される前提で対応する

  • 電話勧誘販売は、電話で勧誘し、郵便などで申込み・契約を受ける取引です(第2条第3項)
  • 相手が営業のために結ぶ契約は、原則として適用除外です(第26条第1項第1号)
  • ただし通達は、相手が法人でも一律ではないとしています。個人用・家庭用なら原則適用、実態のない零細事業者は適用の可能性が高い、という説明です
  • 適用される場合は、名乗り(第16条)、再勧誘の禁止(第17条)、書面(第18条・第19条)、8日間のクーリングオフ(第24条)を守ります
  • 適用されない場合でも、名乗る・断られたら記録してかけない・時間帯に配慮する、の3つをすすめます

メールで営業する場合の法律は、営業メールを送る前に確かめたい、特定電子メール法の5つのルールにまとめました。リストの作り方の全体は営業リストの作り方で説明しています。

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確かめた資料(2026年9月30日に確認)

この記事は法律の一般的な説明です。個別の判断は専門家に確認してください。


この記事は、営業リストの作成サービス「リストハブ」を運営するミルブレインズ合同会社の編集部が書いています。数字は、リストハブに収録している企業・店舗のデータを編集部が数えたものです。数え方と編集方針は「データの集め方・数え方と編集方針」にまとめています。誤りに気づいた方は、運営会社のページからお知らせください。

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