会社のウェブサイトに載っているメールアドレスへ営業メールを送ってよいのか。特定電子メール法(迷惑メール対策法)の条文と、総務省・消費者庁のガイドラインをもとに、送ってよい相手、メールに書くべきこと、罰則、フォーム営業の扱いを整理しました。
会社のサイトに載っているアドレスへ、自社のサービスを紹介するメールを送る。BtoBの営業ではよくあるやり方ですが、送る前に押さえておくべき法律があります。特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)、通称「特定電子メール法」「迷惑メール対策法」です。
この記事では、条文と総務省・消費者庁のガイドラインで確かめられたことだけを書いています。個別のケースで判断に迷うときは、弁護士などの専門家に相談してください。
1. 営業メールは「特定電子メール」にあたる
法律が対象にしているのは「特定電子メール」です。第2条で、営利を目的とする団体や営業を営む個人が、自分や他人の営業について広告・宣伝のために送るメールと定められています。
会社が自社の商品やサービスを紹介するメールは、ほぼこれにあたります。本文に広告がなくても、営業用のサイトへ誘導することが目的なら特定電子メールになる、とガイドラインは説明しています。一方、広告を含まない事務連絡や時候の挨拶はあたりません。
対象になる「電子メール」は、ふつうのメール(SMTPという仕組みで送るもの)と、電話番号あてに送るSMSです。
2. 原則は「同意した相手にだけ送れる」、ただし例外がある
第3条第1項は、特定電子メールを送ってよい相手を限っています。原則は、あらかじめ「送ってよい」と同意した相手だけです。これを「オプトイン」と呼びます。
同意がなくても送れる例外は、次の3つです。
- 名刺などの書面で、自分のアドレスを教えてくれた相手(第3条第1項第2号)
- 取引関係にある相手(同第3号)
- 自分のアドレスをインターネットで公表している団体や、営業を営む個人(同第4号)
営業リストを使ったメール営業で関係するのは、3つ目の例外です。会社のサイトに問い合わせ先としてアドレスを載せている会社には、同意がなくても営業メールを送れます。
ガイドラインは、この例外を設けた理由を次のように説明しています。アドレスを公開している事業者にビジネス向けの広告を送ることは、ビジネスの慣習として一定の範囲で認められている、という考え方です。
「広告メールお断り」と書いてあれば送れない
3つ目の例外には条件があります。アドレスと一緒に「広告・宣伝メールの送信はお断りします」といった文言を載せている場合は、例外になりません(施行規則第3条ただし書き)。
ガイドラインは、この拒否の表示はアドレスの直前か直後に書くのが適当だとしています。送る前に、相手のサイトのアドレスのまわりに「営業メールお断り」「広告メール不可」などの表示がないかを確かめてください。
3. メールに必ず書くこと
同意があっても例外にあたっても、特定電子メールには次のことを書く必要があります(第4条、施行規則第7条〜第9条)。
- 送信者の氏名または名称
- 受信拒否の連絡先(メールアドレスかURL)と、受信を拒否できること
- 「受信を拒否できること」は、連絡先の直前か直後に書きます
- 送信者の住所
- 苦情や問い合わせを受け付ける連絡先(電話番号、メールアドレス、URLのどれか)
氏名・名称と受信拒否の連絡先は、受け取った人がすぐに気づける場所に書きます。住所と問い合わせ先は、メールの中でなくウェブページに載せてもかまいません。その場合は、そのページの場所をメールの中に示します。
実際のメールでは、署名の下に次のような一文を置けば足ります。
今後このようなご案内が不要な場合は、下記までご連絡ください。配信を停止いたします。 配信停止の連絡先:(メールアドレスまたはURL)
4. 「不要です」と言われたら二度と送らず、同意は記録に残す
受信を拒否すると伝えてきた相手には、それ以降、特定電子メールを送ってはいけません(第3条第3項)。拒否の連絡は、メールの返信でも、そのほかの方法でもかまわないとされています。
リストで管理しているなら、拒否してきた会社のアドレスを「送信しないリスト」に入れておきます。別の担当者が同じ会社に送ってしまう事故を防げます。新しくリストを買い足したときも、このリストと突き合わせてから送ります。
反対に、相手から「送ってほしい」「送ってよい」という同意をもらって送る場合は、その同意があったことを示す記録を保存する義務があります(第3条第2項)。展示会で受け取った申込書や、ウェブの登録フォームの記録などがこれにあたります。公表アドレスの例外で送る場合でも、いつ、どのページでアドレスを見つけたかを残しておくと、あとで問い合わせを受けたときに説明できます。こちらは法律の義務ではなく、編集部のすすめです。
5. 罰則:送信元の偽装は直罰、ほかの違反は命令を経て
罰則は、違反の種類によって2つの段階に分かれています。
| 違反の種類 | どうなるか | 条文 |
|---|---|---|
| 送信に使うアドレスや設備の情報を偽って送る(第5条) | 命令を経ずに、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 第34条第1号 |
| 同意のない送信、拒否した相手への送信、表示の不備など(第3条・第4条) | まず総務大臣と内閣総理大臣(消費者庁)が改善の措置を命じることがある(第7条)。命令に違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 第34条第2号 |
| 同意の記録の保存(第3条第2項)についての命令に違反 | 100万円以下の罰金 | 第35条第1号 |
第34条の違反を会社の業務として従業員が行った場合、行為者のほかに、会社にも3,000万円以下の罰金が科されます(第37条第1号)。第35条の違反では、会社に科されるのは同じ100万円以下の罰金です(同条第2号)。
第7条の命令は、条文上、一時に多くの相手へ送る場合などを想定した書き方になっています。どんな場合に命令が出るかの細かい条件は、条文とガイドラインで確かめてください。罰則の「懲役」は、刑法の改正にあわせて、2025年6月1日から「拘禁刑」に変わっています。
フォーム営業はどう扱われるか
お問い合わせフォームに営業文を書いて送る「フォーム営業」に、この法律が適用されるかどうか。これについて、総務省・消費者庁の公式な見解は見当たりませんでした。ガイドラインにも記述がありません。
法律の対象は「ふつうのメールとSMS」と省令で決まっています。フォームから送った内容が、相手の会社の中でメールとして届くことはよくあります。そのため、フォーム営業が対象になるかどうかは、はっきりとは言えません。
リストハブ編集部としては、フォーム営業でもメールと同じルールを守ることをおすすめしています。
- 送信者の名前と連絡先を書く
- 配信を止める方法を書く
- 「営業お断り」と書いてあるフォームには送らない
- 断られた会社には二度と送らない
法律で義務があるかどうかにかかわらず、これを守らない営業は相手の会社に嫌われます。自社の評判を落とすことにもつながります。
関連する法律
特定商取引法
特定商取引法にも、広告メールの規制があります(第12条の3)。ただしこれは、通信販売の広告を消費者に送る場合の規制です。
事業者どうしの取引で、相手が営業のために契約するものには、原則として適用されません(第26条第1項第1号)。ただし消費者庁の通達は、相手が法人だというだけで一律に外れるわけではないとしています。個人事業主に家庭でも使う商品を売り込む場合は、適用される前提で考えます。
個人情報保護法
会社そのものの情報は個人情報にあたりません。ただし、役員や従業員の情報は個人情報です。「yamada.taro@会社名.co.jp」のように、アドレスから個人が分かるものは、それだけで個人情報にあたります(個人情報保護委員会のQ&A)。
営業リストに担当者の個人名のアドレスが入っているなら、個人情報として管理する必要があります。
確かめた資料(2026年9月30日に確認)
- 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
- 同法施行規則(e-Gov法令検索)
- 特定電子メールの送信等に関するガイドライン(総務省・消費者庁、平成23年8月)
- 迷惑メール対策(総務省)
- 特定商取引に関する法律(e-Gov法令検索)
- 特定商取引に関する法律等の施行について(消費者庁、令和6年11月19日)
- 個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(個人情報保護委員会)
困ったときの相談先:違反メールの相談や情報提供は、総務省から委託を受けた迷惑メール相談センター(一般財団法人日本データ通信協会)が受け付けています。
この記事は法律の一般的な説明です。個別の判断は専門家に確認してください。
この記事は、営業リストの作成サービス「リストハブ」を運営するミルブレインズ合同会社の編集部が書いています。数字は、リストハブに収録している企業・店舗のデータを編集部が数えたものです。数え方と編集方針は「データの集め方・数え方と編集方針」にまとめています。誤りに気づいた方は、運営会社のページからお知らせください。